理論的におかしいことは長続きしない。あるいは、理論的に説明できないことが生じる場合は、その理論が置いている前提を疑うべき。


金融商品のPricingをやるのは楽しいよな?アレをロングして、コレをショートして・・・・でもな、大事なのは会社がそもそもナンデその金融商品を売ろうと思ったのか。そのコンテキストを理解しないとダメだ。CFOが何をしたかったのか。市場の反応をどう予測していたのか。Corporate Finance通りには理解できないことが必ず生じてくるが、それもこのコンテキストを把握すれば、解決の糸口がつかめるんだよ」


理論がなければ、混沌とした現実世界をどう考えればいいか、その思考の出発点すら持つことができないのだ。


VCによるValuationでは、大体割引率50%を使う。コレはえらい高い数値である。CAPMのレンジを飛び越えている。たとえVCのManagement FeeとかCarryを含んでも、割引率の理論的な上限はせいぜい30%くらいだ。でも50%がVCのRule of Thumb(経験則)で、実際にこれでうまくいっている。じゃあなんでこんなに高いのか?それは、投資対象がポシャるリスク(事業破綻リスク)を考慮しているからだ。マイクロソフトとかトヨタをValuationするとき、その将来キャッシュフローがゼロになることを想定することはまず、ない。でもVCが投資するベンチャー企業は7割以上の確率でポシャるのだ。この低い生存確率をカウントするからこそ、割引率は50%になる。普通のCoporate Financeでは導き出せない数値だ。


「重要なのは、この割引率が成り立っている理論的根拠(この場合では生存確率の考慮)を理解しておくことだ。この理論を分かっていなくても、平時なら盲目的に経験則を信頼して50%を採用していれば問題ないだろう。でもコレが通用しなくなったら?経験則が通用しなくなったとき、その原因を分析し、修正できるのは理論を知っている者だけだ。理論を理解していれば、変数を追加・修正するなり、枠組みを変えるなりして対応できるはずだ。理論を理解していればこそ、環境の変化に対応でき、したがい競争に勝ち抜くことができるのだ」。