もうひとつ、面白いのは、同時にその産業にいる企業の数、というのをプロットすると、
ドミナント・デザインが出来るまで企業の数は増え続けるが、
ドミナント・デザインが決まってしまうと、単なる価格競争と規模の経済に陥るので、企業の数は減っていくのである。

例えば、Utterbackの著作にある、タイプライターの例。
最初は、雨後のタケノコのように、いろんな会社からいろんなデザインのものが提唱される。
1920年代には、いわゆるQWERTYキーボード、大文字と小文字を打ち分けるShift機能、文字送りをするTab機能、タイプしながら今打ってる文字が見える機能、などタイプライターのドミナント・デザインと言われるものが定まってくる。
ドミナント・デザインでシェアを取った企業が有利になり、大きく会社を成長させる。
それと同時に、価格競争が始まり、製品の質は投資の量に比例するようになるから、小さな企業は駆逐されていく。
こうやってドミナント・デザインが決まると、企業の数がだんだん減っていくのだ。
そうして企業の数が減ると、イノベーションも生まれにくくなるから、製品としてのパフォーマンスもだんだん頭打ちになる。
こうやって、産業は成熟期→停滞期を迎えていくわけである。

彼の著作では、タイプライターのほかに、電球、氷産業といった1800年代の例から、
自動車、PC、トランジスタ、テレビ(ブラウン管)、電卓、スパコン、ディスクドライブ、といったあらゆる製造業で、この興亡が検証されている。