出口社長:「日本の大企業がある国、例えばベトナムにしましょうか、に行くと仮定しまして、最初に何をすると思います?」


ちきりん:「まず市場調査してレポートを書くとかですかね?」


出口社長:「その通りです。次に誰を駐在させるかを決めるんですよ。アクサという会社は最初は小さかったんですが急激に成長して、今や世界一の保険会社です。その創業者に会いに行ったことがあります。アクサの本部はパリにあるんですが、200人くらいしかスタッフがいないんですよ。アクサが国際展開を活発にやっている頃だったので『どうやって海外進出を行っているんですか?』と聞きました。

そのときの話を単純化して言うと、まずベトナムでオフィスを開くと宣言する。その次にベトナムのアクサの社長を公募する。希望者は、ベトナムのマーケットの分析と将来展望をフランス語で書いて提出しろと。提示される給与は、たとえばベトナムの平均の5倍とかありますから、ベトナムの保険マーケットに自信がある人は全員応募して来るんですよ。そしてレポートの出来がいい人、たとえば上位5名を身元調査して、パリに呼んで面接し、その中から一人を選んで、予算をつけてその人物にやらせるというんです。

マーケット調査などしなくとも、自然に最高のレポートと人材が集まるようなしくみになっているんです」



指針の決定過程

出口社長:「フランスは少子化対策に成功しましたが、最初にまずフランス文化を後世に残したいか否かを決めたんです。残す、という意見でまとまったら、次に『フランス文化を残すためにはフランス語を話す人口を増やすべきである』と決めた。国全体で理念をはっきり掲げ、コンセンサスが取れているので、政策がぶれないんです」


ちきりん:「日本も今子ども手当てをひとりずつ支給することについて、所得制限を設けろという話になっていますが、民主党の人がきちんとみなに言うべきなのは、子どもは社会で育てるべきという理念ですよ。金持ちだろうが貧乏だろうが、子を育てるのに親の金をかけさせないということでしょう。 それを話さないからけちな議論になってしまう。理念を語る人が少ないですね。あとは、リーダーの最も大事な仕事は決断をすることなんですが、本人も、とりまきの周辺も分かってないですよね。これも鎖国的な発想があるからなのかな。同質な人ばかりだと、どうしよっか〜と言い合っているうちになんとなく決まってしまいます。それが、それぞれ違う人がいると、誰かがリーダーシップを発揮して論点をまとめて決定していかないと話が前に進まないんですね。なので違う人がたくさんいるところにまず放り込まないとだめですね。